20 August 2006

難爲情

『風月機関』妓女対客十箇条のうち「刺」
刺者,計雖苦肉,而難爲情。三針一排,爲之畫。五針 一排,爲之刺。鮮血既出,以墨按之。口雖言而不痛,實捱乎至疼。瘡靨脱去, 筆畫方眞。非至情別不能也。
小川陽一『明代の遊郭事情 風月機関』における訳:
刺は苦肉の計とされるけれども,情を苦しめるものでもある。 三本の針で打つのを画といい,五本で打つのを刺という。鮮血が 出たら,墨で押さえる。口では痛くないというが,実際には激痛を受けている のである。傷痕がきれいになって,始めて筆画(文字)が本物になる。これは 至情がなければ,できないことであろう。
拙訳(かなり意訳):
刺というものは苦肉の計であって,成り行きで止むに止まれぬことは有る。とは言うものの,三度刺して短い筆画を為し,五度刺してやや長い筆画を為すのである。血は吹き出すし,そこへ墨をすり込む。口では痛くないなどと言っても,実は手に汗を握って耐えているのである。それから傷が癒えて痕がきれいになって,やっとちゃんとした文字になる。やっぱりこれは生半可な気持ちでできることではない 。刺と乎は誤字ではあるまいか。